Locus of Life


回避型の定義と特徴
回避型愛着スタイルとは、感情を抑える傾向があり、他者との距離を保とうとする傾向が強いスタイルです。こうした人は、感情を表に出すことが苦手だったり、人との深い関係に対して無意識のうちに抵抗を感じていたりします。一見すると自立していて冷静に見えるため、周囲からは「しっかりしている」「頼れる人」と思われることもあります。
しかしその内側には、感情を抑圧してきた長い歴史や、傷つくことへの強い恐れがあることも少なくありません。
回避型かもしれない、ある人の話
私の知 り合いに、この人は回避型ではないかと思う人がいます。もちろん、私に対して心を開く必要を感じていないからかもしれませんが、今回は「回避型だったとしたら」という視点でお話しします。
その人はとても優しく、思いやりがあり、人を損得なしに助けることができる人です。でも、私がその人のことを少しでも深く知ろうとしたり、今より親しくなろうとすると、まるで心を閉ざすかのように距離を取られてしまいます。最初は「私のことが嫌いなのかな?」と思い、戸惑いました。でも時間が経つと、何事もなかったかのように連絡をくれたりするのです。
そして私が少し心を開いたタイミングで、またその人は距離を取る──そんなことの繰り返しに、違和感を覚えるようになりました。
その頃、私は愛着理論について学ぶ機会があり、「この人は回避型かもしれない」と思うようになりました。その人の過去について私は知りません。自分のことを話したがらない人だからです。でも、幼少期に辛い経験をしていたのかもしれません。親しい人に裏切られたり、大切にされなかった思い出があるのかもしれません。
私はその人を「助ける」ことはできません。でも、もしその人が私と話したいと思ったときには、そっと隣にいることはできる。なぜなら、それはその人自身が向き合い、乗り越えていくべきものだからです。
なぜ回避型の人は自分の内面の困難に気づきにくいのか
「ひとりでも平気」「感情は必要ない」「誰にも頼らない」――回避型の愛着スタイルを持つ人が信じていることの多くは、こういった考え方です。そして実際、多くの回避型の人たちは、責任感があり、自立し、有能です。それ自体は間違いではありません。
けれど、愛着理論の研究――特にジョン・ボウルビィとメアリー・エインスワースによる研究――に よれば、回避型の愛着は、子ども時代に感情が繰り返し無視されたり、軽んじられたり、時には否定された経験から生まれることがあると言われています。
たとえば、泣いても「泣かないで」と言われたり、慰めを求めたときに突き放されたりすると、子どもは「感情を見せることは危ない」と学びます。そして次第に、自分の気持ちを押し込めていくのです。それは、感情がなくなるわけではありません。ただ、「隠したほうが安全だ」と感じた結果なのです。
こうして感情を抑えることが習慣になり、大人になるころには、それが“普通”になります。「私は孤独じゃない。ただ一人の時間が好きなだけ」「話すことなんてない。ただ感情に振り回されるのが嫌なだけ」そう思いながら、心の奥にある本当の感情から目をそらして生きていくのです。
でも、ときおり胸のどこかで、うっすらとした違和感を感じることはありませんか?大きな問題はないのに、どこか人との距離を感じる。何かを達成しても、なぜか心が満たされない。「うまくいっているはずなのに、なぜか 落ち着かない」――そんな声が、心の奥で静かに響いてくるかもしれません。
もしそう感じることがあったなら、それは“壊れている”からではなく、ずっと守ってきた心の一部が、「そろそろ見つけてほしい」と願っているサインかもしれません。
変化は、「自分を直そう」とすることから始まるのではありません。まずは、自分の内側をそっと見つめることから始まります。
「自分は何から身を守ろうとしてきたんだろう?」「もし誰かを少しだけ信じられたら、どんな感じがするだろう?」そう問いかけることが、変化の第一歩です。
感情を表すことは、弱さではありません。それは、静かで力強い、勇気の表現です。
そしてその小さな一歩こそが、本当のつながりや安らぎへの入り口になるのです。
もしあなた自身が回避型の傾向に気づいたなら
もしあなた自身が回避型の傾向に気づいたなら、「心を開くこと」そのものに、恐れや違和感を覚えるかもしれません。それは当然のことです。なぜなら、これまでの人生で何度も「心を開くことで傷ついた」「感情を見せたら拒絶された」といった経験があったのなら、それを避けることこそが、自分を守る唯一の方法だったからです。
「一人でいるほうが楽」「誰にも頼らないほうが安全」——そうやって、感情にフタをしてきたあなたは、きっと何度も自分自身を守ってきたのだと思います。だから、無理に変えようとしなくていいのです。大切なのは、「感じないようにしてきた自分」を否定することではなく、「感じられなかった感情」に、少しずつスペースを与えてあげること。
まずは、自 分の内側にある感情に、そっと耳を傾けることから始めてみてください。たとえば、以下のような方法があります:
安心できる静かな場所で、自分の気持ちを日記に書いてみる
「わかってもらえた」と感じた過去の小さな出来事を思い出してみる
カウンセリングなどの安全な関係性の中で、少しずつ言葉にしてみる
感情は、最初はうまくつかめなかったり、よくわからなかったりするかもしれません。でも、もし日常の中でふと「人との関係がうまくいかない」「誰かといてもどこか孤独を感じる」といった心のざわつきがあるなら、それはあなたの心が、そっとサインを送っているのかもしれません。
「感情を表すことは、弱さではなく勇気だ」と、少しずつ思えるようになると、人との関係の中にも新しい変化が生まれてくるかもしれません。
そして何よりも大切なのは、「誰かに助けてもらってもいい」と、自分に許可を出すこと。長年、「頼らないこと」を選んできたあなたにとって、それはとても大きな一歩かもしれません。でもそれは、自分に優しくなるということ。自分の本当の気持ちを、誰よりも自分自身が大切にしてあげることです。
どうか自分を責めず、急がず、一歩ずつ、自分のペースで向き合っていってください。その歩みこそが、ほんとうの「つながり」への道のりなのです。
回避型の人との関わり方
回避型の人との関係は、一見スムーズに感じられることも多いかもしれません。なぜなら彼らは感情的になりすぎることが少なく、自立していて、人に依存するような言動が少ないからです。でも、実はその裏で、深い孤独や、誰にも触れてほしくない繊細な感情を抱えていることもあります。
回避型の人と関わるとき、大切なのは「無理に近づこうとしないこと」と「信頼を積み重ねること」です。距離を詰めすぎず、静かにそばにいる。必要以上に「話してほしい」「もっと分かり合いたい」と焦らず、相手のペースに合わせる。たとえ心を開いてくれなくても、それを「拒絶」と受け取らないことが、とても大事です。
回避型の人と関係を築いている方の中には、「どうしてこの人はもっと親しくなろうとしないのだろう」「なぜ心を開いてくれないのだろう」と悩み、自分が悪いのではないか、嫌われているのではないかと感じてしまう方もいるかもしれません。特に、不安型の愛着スタイルを持つ人にとっては、相手の冷たさや距離感がとてもつらく感じられることがあります。
けれど、それはあなたのせいではあ りません。あなたに非があるわけではないのです。どうか自分を責めないでください。
時間はかかるかもしれませんが、「この人は安全だ」「この人には自分を見せても大丈夫かもしれない」と思ってもらえるような関係を、少しずつ築いていくことが信頼への第一歩です。回避型の人が自分のペースで少しずつ心を開いていけるよう、静かにそばにいる存在でいてあげてください。
最後に
回避型の人との関係に心を悩ませている方、あるいは「もしかしたら自分が回避型かもしれない」と感じている方へ。
その生きづらさを、どうか一人で抱え込まないでください。Locus of Lifeで、少しずつ、一緒にほどいていきませんか?
安心できるペースで、自分の気持ちに触れていく時間を。ここには、あなたの心にそっと寄り添う対話があります。