Locus of Life


言葉が持つ力について、考えたことはありますか?日常の会話では、何気なく発した言葉が相手にどう伝わるかで、その後の関係や雰囲気が大きく変わることがあります。特に、「あなたを主語」にして話すと、相手に文句や批判のように聞こえることが多いのです。一方で、「わたしを主語」にして、自分の気持ちや感情を率直に伝えると、同じ内容でもまったく違った受け取られ方をすることがあります。
例えば、部屋が散らかっているのを見て、「あなた、なんでこんなに散らかしたままなの?」と言ったとします。この言葉を聞いた相手は、責められていると感じ、防衛的な態度を取るかもしれません。でも、「わたし、この散らかった状態を見るとちょっと落ち着かなくなっちゃう」と伝えるとどうでしょうか。相手は、「ああ、そう感じるんだ」と受け入れやすくなるのです。この違いは、相手を責めるか、自分の感情をただ共有するかというアプローチの違いから生まれます。
このように、「わたしを主語」にして感情を伝える方法は、心理学では「アイ・メッセージ(I-Message)」と呼ば れます。「あなたが~」と相手を主語にすると、どうしても批判的なニュアンスが強調されてしまいますが、「わたしは~」と話すことで、相手への責任追及を避け、自分自身の感じ方をただ伝える形になります。それだけで、会話のトーンが驚くほど穏やかになるのです。
この方法が効果的な理由は、いくつかあります。
相手の防衛反応を抑えることができます。「あなたが悪い」と言われたら、人は自然と身構えますよね。でも、「わたしはこう感じる」と聞くと、「そうなんだ」と受け止める余裕が生まれます。
自分の感情に向き合うことにもつながります。普段は相手の行動にばかり目が向いてしまいがちですが、「わたし」を主語にすることで、「自分は何に困っているのか」「どんな感情を抱えているのか」に気づけるのです。
実際にこれを使うのは、簡単なことではありません。特に、怒りや苛立ちが先に立つときは、「あなたが悪い」と責めたくなるものです。でも、そんなときこそ、一呼吸おいて「わたし」を主語にした言葉を選ぶ練習をしてみてください。「わたしがこう感じている」「こうしてもらえると私は助かる」という言葉は、相手を傷つけることなく、自分の気持ちを伝える手段となります。そしてそれは、単に感情を伝えるだけでなく、相手との関係をより良いものにする力を持っているのです。
コミュニケーションの質を少しずつ変えていくことで、私たちの人間関係はもっと豊かなものになるはずです。あなたも今日から、「わたし」を主語にした話し方を始めてみませんか?