Locus of Life


イギリスに移住したきっかけは、元夫との結婚でした。当時の私は、日本とイギリスの生活の違いや、海外で暮らすことの難しさ、言葉の壁といった現実にほとんど目を向けることなく、ただ「愛する人と新しい土地で暮らせる」という喜びだけを胸に、この国にやって来ました。今振り返ると、自分の無知さに思わず苦笑してしまいます。慣れない異国での生活は、右も左もわからず、頼れるのは元夫だけという状態でした。
そんなふうに始まった結婚生活は15年続きましたが、ある日突然、元夫から離婚を告げられました。当時、まだ幼かった息子を抱え、「これから私はこの国でどうやって生きていけばいいのだろう」と、途方に暮れたのを今でもはっきりと覚えています。
離婚にともなう裁判は、私の人生で最も苦しい時期でした。元夫からは、執拗ないじめや挑発的な言動が続きました。そのたびに心の中で「なぜ私をこんなふうに扱うの? もう終わったことなのに、どうして放っておいてくれないの?」と叫びながらも、つい彼の言動に反応してしまう自分がいました。
そんな中でカウンセリングを学び始めたことが、私の人生を大きく変える転機となりました。自分を大切にすることの意味を学び、少しずつ「自分の軸」で生きることができるようになっていったのです。完璧ではないけれど、以前よりもずっと生きやすくなり、イギリスでの生活も、楽しく、そして楽に感じられるようになりました。
離婚からまもなく8年が経とうとしています。この年月を振り返って気づいたのは――たとえ理不尽であっても、元夫の存在がなければ、今の私はいなかった、ということです。彼があのような態度を取り続けていなければ、私がここまで強くなれたかどうかは分かりません。彼の行動に傷つきながらも、それを糧にして、私は自分をより魅力的で強い存在に育ててきたのだと思えるようになりました。そう思えた瞬間、それまで心の奥にあった黒い感情がすっと消え、彼を少しだけ許せた気がしました。
これまで、元夫に感謝の気持ちを抱くなんて、考えたこともありませんでした。けれど今、小さな芽のようにではありますが、彼への感謝の気持ちが少 しずつ生まれているのを感じています。それは決して完璧な感情ではないけれど、それでも十分だと思えるのです。「よくここまで頑張ったね」と、自分自身に声をかけながら、その小さな芽を大切に育てていきたいと思っています。
今、カウンセリングを行う私自身も、まだ「自分を完全に愛している」とは言えません。でも、クライアントの皆さんとともに歩み、成長し続けているという実感があります。そして、私自身が経験してきた生きづらさがあるからこそ、同じように悩む方々に心から寄り添えるのだと信じています。
「自分を知る」ということは、一見簡単そうに聞こえるかもしれませんが、実はとても奥深く、複雑な営みです。「私は自分のことをよくわかっている」と思っていても、日々の出来事や人との関わりの中で、「こんな感情が自分の中にあったんだ」と驚くことが何度もあります。自分の中にある繊細な部分、傷つきやすさ、怒りの裏側にある寂しさや恐れ――そうしたものに少しずつ光を当てていくことで、ようやく本当の意味で「自分を知る」ということが始まるのだと感じています。
そして、「自分を愛すること」は、言葉で言うよりずっと難しいものです。「こんな自分じゃだめだ」「もっと頑張らなきゃ」と、自分を否定する声は簡単に聞こえてくるのに、「そのままでいいよ」「よく頑張ってるね」と自分に優しく語りかけることは、なかなかできません。
それでも、人はみな、一生をかけて「本当の自分とは何か?」という問いの答えを探し続けていくのかもしれません。その道のりは決して一直線ではないけれど、迷いながらも自分に向き合い続けることにこそ、大きな意味があるのだと思います。
もしあなたが、心の平穏を探し求めているのなら――ぜひ、私と一緒にその旅に出てみませんか。あなた自身の「Locus of Life(人生の軌跡)」を、共に描いていきましょう。