"敬天愛人:異国で気づいた日本の心と人とのつながり"
- Locus of Life

- Aug 29
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Updated: Sep 6
「敬天愛人(けいてんあいじん)」――この言葉をご存じでしょうか。「天を敬い、人を愛す」と読みます。かつて日本航空(JAL)の再生に大きな功績を残した稲盛和夫会長が座右の銘にされていたことでも知られています。
私自身もこの言葉が大好きで、人生を支える大切な指針として心に刻んでいます。特に海外での暮らしを通して、その意味を改めて感じるようになりました。
「天を敬い、人を愛す」が示す生き方
「敬天愛人」は、単なる美しい響きの四字熟語ではありません。
ここでいう「天」とは、自然界や宇宙の法則、自分を超えた大いなるもの、あるいは目に見えない“道理”などを指します。「敬天」とは、このような人知を超えた存在や摂理に対して謙虚に向き合い、慎み深く生きる姿勢を表しています。
一方、「愛人」は周囲の人々を尊重し、思いやりを持って誠実に接することを意味します。相手の幸せや成長を願い、自分の価値観を押し付けるのではなく、背景や気持ちを理解すること。それが愛情に満ちた態度だと私は考えています。
この「敬天」と「愛人」の二つの姿勢が両立して初めて、心は穏やかになり、豊かな人間関係と自分らしい人生を築く土台が生まれるのだと感じています。
稲盛和夫会長の「敬天愛人」精神
私がかつて勤務していた日本航空(JAL)で、稲盛和夫会長が再建に尽力された際、その「敬天愛人」の精神が徹底されていました。
会長は、社員一人ひとりを大切にし、会社の中でこの精神を実践されました。特に、社内報『敬天愛人』では、巻頭言として「心の経営」や「人を大切にすること」の重要性が繰り返し伝えられ、社員の心に深く響きました。
私自身、直接的な指導を受ける機会はありませんでしたが、会長の姿勢や言葉から多くの学びを得ることができました。あの時、もしご一緒に働くことができていたなら、どれほど多くの学びを得られただろうと、今も時々思いを馳せます。
イギリスでの暮らしと深まった気づき
イギリスに渡り、私は右も左もわからない環境で必死に生活の基盤を築こうとしていました。言葉の壁、文化の違い、仕事や人間関係のスタイル――どれもが新しく、時に孤独を感じることもありました。
そんな中で、ふと気づいたのです。日本にいた頃は自然に持っていた「人を敬う心」や「思いやりの気持ち」を、どこかで置き忘れてしまっていたことに。
「私はこの国で何を学び、何を残していきたいのだろう?」
「日本人として、あるいは一人の人間として、ここでの存在意義は何だろう?」
自分に問い続ける日々が続きました。
そしてある時、答えは意外なほどシンプルで明確な形で現れました。
『人がどうであろうと、私は人を敬い、誠実に接し続ける』
この覚悟を持つことこそが、私が異国で生きる意味だと気づいたのです。それは、表面的なマナーや礼儀ではなく、自分の根底に流れる価値観を再確認する瞬間でもありました。
自分から始める「和」を広げる生き方
その気づきを胸に「人を敬い、誠実に接する」ことを日々意識するようになると、驚くべき変化が訪れました。
まず、自分の内面が穏やかになり、不思議なほど前向きな気持ちで日常を過ごせるようになったのです。焦りや苛立ちが減り、心にゆとりが生まれたことで、以前よりも笑顔が増えたように思います。
そして、私自身の変化に呼応するかのように、周囲の人々の接し方も変わっていきました。挨拶ひとつ、ちょっとした会話のトーンが柔らかくなり、相手からも自然な敬意や思いやりを感じるようになったのです。
これは心理学でいう「プロジェクション(投影)」の現象とも関係しています。プロジェクションとは、無意識のうちに自分の内面にある感情や価値観を他者に映し出す心理的メカニズムです。
自分が穏やかで尊重の心を持って接していれば、相手も無意識にその態度を受け取り、返してくれる
自分の心が不安定だったり攻撃的だと、それも相手に投影され、相手の態度が冷たく感じられることがある
つまり、自分の内面を整え、敬意や思いやりを発することは、単に自分の心の安定のためだけでなく、周囲の人々や社会全体の雰囲気にもポジティブな影響を与えるのです。
さらに私は思うのです。自分から人を敬う気持ちを発すれば、その思いは目の前の相手に伝わり、そこからさらに次の人へと広がっていく。そんな連鎖が世界に少しずつ生まれたら、どれほど素晴らしいことでしょうか。
ある人はこう言いました。「そんなことは昔から多くの人がやってきた。でも戦争はなくならないじゃないか」
その時、私は答えました。「Better than nothing (やらないよりまし)」
確かに一人の力は微弱かもしれません。しかし、聖徳太子が説いた「和を以て貴しと為す」という言葉の通り、人を敬う気持ちは、この尊い「和」を築くために欠かせないものです。私は、この「和を持って貴しと為す」ような世界をつくるために、自分の小さな力でも協力したい――そう心から願っています。
「Locus of Life」カウンセリングのご案内
もし海外生活や文化の違い、人間関係で悩んでいる方、自分らしい生き方を模索している方は、Locus of Lifeのカウンセリングをご活用ください。
安心して話せる場で、心の整理、自己成長、バウンダリーの築き方などを一緒に考えながら、より豊かで自分らしい人生への一歩を踏み出していきましょう。


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