"アルゴリズムを超えて共感へ:AIと人間のつながりに向き合うカウンセラーのまなざし "
- Locus of Life

- Aug 15
- 6 min read
Updated: Sep 6
近年、AIとの会話をする機会が増えています。
悩みや気持ちを打ち明けると、的確で共感的な言葉が返ってきて、まるで誰かに理解してもらえたような感覚を得ることもあるでしょう。
私もカウンセラーとして、そしてAIトレーナーとして、AIに自分の心の声を話してみました。
その体験から感じたAIの可能性と限界、そして人と人とのつながりの大切さについて考えを深めました。
AIとの対話で感じたこと
AIは、驚くほど的確な返事をくれました。
状況を理解し、筋道を立てて、冷静で親身な言葉で返してくれるのです。知識も豊かで、思いやりのある文章。素直に「すごいな」と感じました。
けれど同時に、ある違和感も心の中に残りました。
「それは辛かったですね」「大変でしたね」という共感の言葉があったにもかかわらず、私はなぜか、その言葉が心に響かない。
むしろ、無意識に読み飛ばしてしまっていた… そんな自分に気づいたとき、私ははっとしました。
なぜだろう?
おそらくそれは、「この声は、私の痛みに本当に触れてくれているわけではない」と、身体のどこかが感じ取っていたのだと思います。
AIの返答は論理的で正確で、優しくもありますが、そこに“相手の体温”のようなもの、つまり、「誰かが私の存在にリアルに触れてくれている」という実感は、どうしても希薄になります。
AIがくれた意外な効果
ただ、だからといって、AIとの対話が意味のないものだったわけではありません。むしろ、意外なほど大きな気づきがありました。
私はAIに、自分の気持ちをひたすら書き出しました。返ってきた返事にはほとんど目を通さず、ただ「言葉にする」ことに集中していたのです。
不思議なことに、誰かに向かって語っているような感覚が生まれ、最初は気づいていなかった感情や記憶が、自然と浮かび上がってきました。
まるで、心の奥にある部屋の扉が少しずつ開いていくような感覚でした。
カウンセラーとして、私はこれまで「感情を言葉にすることが癒しの第一歩」だと繰り返し伝えてきました。
まさにそのプロセスが、AIとの対話の中でも起こったのです。
誰かに聞いてもらっていると思えることで、言葉が出てくる。一人でジャーナルを書こうとしてもなかなか始められないのに、「相手」がいることで、心が動き出す。この点で、AIはたしかに、感情のアウトプットを助けてくれる“触媒”のような存在になり得ると感じました。
AIにはできないこと、カウンセリングだからこそできること
AIは、表面的な情報の整理や感情の言語化にはとても優れています。
話すことで自分の気持ちを把握したり、整理したりする手助けをしてくれるという点で、大きな役割を果たしてくれる存在です。
けれど、人の心はもっと複雑で、繊細で、深いものです。私たちの意識のうち、無意識が占める割合は97%にも及ぶとも言われています。
言葉として表に出てくる気持ちの奥には、本人すら気づいていない記憶や、過去の体験による防衛反応、願い、痛みが静かに息づいています。
私たちカウンセラーは、クライアントが語る言葉だけでなく、表情の変化、姿勢の揺れ、手の動き、沈黙の質、呼吸のリズム、目線の動きなど、ボディーランゲージを含めた「その人全体」の非言語のサインにも耳を傾けます。
言葉にならない感情が、身体を通して語られる瞬間があります。むしろ、そうした“非言語のサイン”こそが、その人の本当の願いや苦しみを教えてくれることもあるのです。
AIとの対話では、こうした微細な身体性や、その場の空気の変化に気づくことは、今のところほとんど不可能です。
だからこそ、私たち人間同士の対話の中で、語られない声に耳を傾け、ただ傍にいることの力を信じたい。カウンセリングとは、まさにそのような、生身の関係性の中でしか生まれない営みだと私は思っています。
AIと依存に関する注意喚起:イライザ効果
また、人間のカウンセラーとクライアントの間でも依存関係が生まれることがあります。そうした場合、人間のカウンセラーはスーパービジョンを受けたり、適切な対応を行い、クライアントの依存を防ぐ努力をします。
一方、AIとの対話では「イライザ効果」と呼ばれる現象が起こり得ます。これは、人工的な存在に対してまるで本物の人間のように感じ、無意識のうちに心理的依存を形成してしまうことです。
しかし、AIには依存の兆候を察知して対応する能力がなく、相談者が過度にAIに頼る状態が進行しても適切な対処がなされません。私はこれを非常に危険なことだと考えています。
私たちは、「こうすればいい」と答えを押しつける存在ではありません。あなたのペースで、あなたの言葉で、必要であれば沈黙の中でも、そっと寄り添いながら、一緒に立ち止まり、考え、感じていく。その“つながり”の中でこそ、深い癒しや変化が育まれていくのです。
AIと人とのあいだで
これから益々、日々の悩みや気持ちをAIに話す人は増えていくでしょう。
手軽に、匿名で、そして正確に返してくれる相手として、AIはとても心強い存在です。
けれどその一方で、人と人とのふれあいが少しずつ減っていくのではないかという懸念も、私の中にあります。
どこかで「人に話すのは面倒だ」「AIで十分だ」と思うようになる時期が来るかもしれません。けれど同時に、AIに話すことにどこか疲れを感じたり、人とのふれあいを恋しく思う瞬間が、きっとやってくるようにも思うのです。
人間は、やはり誰かと「分かち合いたい」「受け取ってほしい」「わかってほしい」と願う生きものです。AIとの対話はその第一歩になることはあっても、そこに“ぬくもり”や“まなざし”を求めたくなるときが、必ずあるのではないでしょうか。
結びに 〜ひとりで抱えなくて大丈夫です〜
「誰にも話せないけど、ちょっとだけ気持ちを出したい」
「うまく話せないけど、誰かに聞いてほしい」
そんなとき、AIに話しかけてみるのも一つの方法だと思います。
でも、そこからさらにもう一歩、「誰かと気持ちを分かち合いたい」そう思えたときには、どうぞ人の手を頼ってみてください。
私たちカウンセラーは、どんなにうまく話せなくても、どんなにまとまっていなくても、あなたがここにいること、感じていることにちゃんと耳を傾けます。
言葉にならない想いの奥にあるものに、一緒に触れていく時間を大切にしていきたいと思います。
Locus of Lifeでは、感情の整理や、自分の物語をやさしく見つめなおすサポートをしています。
「AIに話して少し気持ちが出てきた」「その続きに、誰かと向き合ってみたくなった」そんな時にも、どうぞ安心してお越しください。


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